JTPA主催の第1回シリコンバレーツアーに参加した。私自身は、今回シリコンバレーの訪問は3回目であり、またJTPAのボードメンバーである大澤さんや立野さんとの日ごろの交流を通じて、ある程度はシリコンバレーのカルチャーや風土は理解しているつもりであったが、今回のこのツアーの講師陣の豪華さに惹かれて参加することにした。
今回のセミナーの内容の一部は、梅田さんの「年を取ってから後悔しない人生デザイン」や渡辺千賀さんの「JTPAツアー」に掲載されている。
今回はそのツアーから学んだことをまとめてようと思う。
気候
気候は何にもまして、シリコンバレーが世界中から優秀な人を引き付ける牽引力であると思う。過去2回の訪問はそれぞれ9月と2月で、それぞれ真夏と肌寒い雨であったので、シリコンバレーの気候を別段痛感することはなかったが、今回3月にこのような初夏の気候で、かつこれが1年のうち10ヶ月続くと聞けば、その生活の快適さを想像するに難くない。気候によって気持ちは前向きにも後ろ向きにもなるという話を聞いたがまさにその通りだと思う。日本中でシリコンバレーの真似事が進んでいるが、天候に恵まれていないところは何をやっても無駄なんじゃないかと思った。
ところでこの気候はシリコンバレーの文化に大きく影響していると思う。昨年MITを中心としたボストン近郊を探索してきたが、確かにボストン近郊も産業集積としては成功しているが如何せんシリコンバレーとは明確にカルチャーが違う。
失敗したも失業しても落ち込んでも、この晴れた空を見上げたら、悩みも吹っ飛んで次のステップへの活力になるのだろう。ベンチャー起業において失敗したときの生活の保障制度、いわゆるセーフティネットの重要性が議論されるが、シリコンバレーにおいてはこの気候が何よりのセーフティネットなのであろう。
シリコンバレーで活躍する人の二つの分類
今回多数のシリコンバレーで活躍している方々とお会いしたが、それらは大きく二つに分類されるのではないかと思った。シリコンバレーは、世界に対して新しいトレンドを創造し発信しているところであるが、そこでの活動を担う人材の中には「トレンドを創る」人材と「トレンドを造る」人材が含まれているように思う。「トレンドを創る」はは恐らく一部の天才が担うことであろう。これは誰もができることではなく、梅田さんの言うところの「解脱」していることが求められる人たちである。一方で、「トレンドを造る」のは恐らくプロフェッショナルとしての職能を持てば比較的多くの人がその役割を担うことが可能なはずである。「トレンドを造る人」としてキャリアアップするためには、まさに渡辺千賀さんの言う「自分が本当に何が好きなのか、何をしたいのか」を明確にするステップが重要であろう。
この「トレンドを創る」「トレンドを造る」それぞれの人々が活発に活動できる場の提供が何よりもシリコンバレーの魅力なのではないかと思った。
自分自身は、「トレンドを造る」側の人間だと思っているので、「解脱」を目出すよりも、何をしたいのかということを考えていこうと思う。
シリコンバレーの批評に関する発展段階
今回色々な方々とお会いして、「トレンドを造る」側の立場の方々による「シリコンバレーの批評」は3段階に分かれるのではないかと思った。
第一段階は、シリコンバレーに移住し、その環境に慣れるまで必死になっている方々である。この方々は、シリコンバレーの魅力を話すと同時にその苦労を話す。
第二段階は、シリコンバレーの環境に慣れてである程度地盤を固めている方々である。この方々は、シリコンバレーの魅力を話すと同時にその楽しさを話す。
第三段階は、シリコンバレーにおいて成功している方々である。この方々は、シリコンバレーの魅力を話すと同時に、その世界における役割・意義を話す。
以上のことからシリコンバレーは、「自分自身という個」を幸せにすることができるが、シリコンバレー内部ばかりを見ている限りは「自分を含めた周りの人たち」を幸せにするためには、あまり適切な場ではないのではないかと思った。
シリコンバレーの限界
シリコンバレーは、プロフェッショナルにとってのメジャーリーグであり、個人の才能を目指すための環境が様々な形で用意されていると思った。しかし一方で自分自身がまだ見えていない、シリコンバレーの世界で敗退し、不幸せになった人たちが沢山いるように思う。恐らくシリコンバレーで幸せに暮らせる人は人類全体の中でも限定されているのではないか。徹底した実力主義は才能のある個人を幸せにするので、社会制度としては絶対に必要であるが、それ以外にそうではない人たちを幸せにする場も必要である。
日本各地で、自地域をシリコンバレーをお手本にしようという議論があるがこれは無謀であるように思う。シリコンバレーの本質は、「新規産業の創造による地域の活性化」の背後に「徹底した実力競争」がある。本当にシリコンバレーをお手本にしている人たちがこのような社会を望んでいるのか大きな疑問がある。日本中にシリコンバレー風メジャーリーグを大量に作ったところで決してそこに暮らす人たちの幸せはない。シリコンバレーモデルは尊重すべき重要な社会モデルであるとは思うが、他の地域が安易に真似るべきものではない、特に日本において別のモデルを考えていく必要性を感じた。
当たり前のことを当たり前に言える環境
今回のツアー、特に最後のパネルディスカッションで、梅田さん、渡辺さん、村山さんの3氏がキャリアについて話をしていたが、自分自身のキャリアに照らし合わしながら、後で振り返って考えてみると、極めて当たり前のことを言っていることに気づく。自分自身がおぼろげながら日々の仕事・活動で感じながらも、日本にいたら「白い目で見られてしまうようなこと」をストレートにはっきりと言っているところがまさにシリコンバレーらいしと思った。例えば渡辺千賀さんの「自分がしごとしたい環境の条件を具体的にイメージするべき」
という指摘について私自身は、
1)毎朝無理して早く起きなくても良い仕事。(ある程度自分で時間調整できる)
2)ネクタイを締めなくても良い仕事。
3)満員電車に乗らず車で通勤できる仕事。
4)学生たちのような若い人たちと触れ合うことのできる仕事。
5)自分のタスク、方向性を自分で開拓できる仕事。
6)「先生」と呼ばれない仕事。 (先生と呼ばれる職業はうさんくさいと思うので)
というイメージを持っているが、私の場合は6)を除いては今の仕事は正に転職と言えよう。
そういった意味で自分の仕事を楽しみながら生活している訳だが、上記の6条件を学生たちに話すと、「なんてわがままで社会不適応」といった反応を示されることが多く、最近はあまり自信を持って公言できずにいた。
今回の研修で勇気づけられたので、これからは積極的にこの点を学生たちにも強調していこうと思う。(もちろん、学生たちには別の道があるだろうから、あくまで選択肢の一つとして)
まとめ
という訳で、今回シリコンバレー研修で学んだことと感じたことを簡単にまとめてみた。
色々な方々のお話を聞いて、あまり違和感を感じずに受け止めることができたのは、自分自身の今のライフスタイルが極めてシリコンバレーのライフスタイルに近いからだと改めて実感した。
今回のカムランの講義の中で、「自分の夢を持て」という指摘があった。私自身の夢は、「人類全ての人が自分の夢を持ってそれを追い求めていくことのできる社会を造る」ことである。
現在はシリコンバレー的な要素をもった「マイナーリーグ」で仕事をしている訳だが、いつか「メジャーリーグ」であるシリコンバレーにて職を造りたいと思う。それと同時に、一方シリコンバレーモデルでは全ての人を幸せにはできないということも痛感したので、シリコンバレーに埋没することなく、そこから世界全体をどう見ているかという視点を深めていきたいと思う。
最後に今回のツアーに参加する機会をいただいた皆様に感謝し、御礼申し上げる。
Posted by kanetaka at 2004年03月20日 04:14 | トラックバック